新しい事業を立ち上げるということ
バブルがはじけ、なんとなく既存の概念にしがみついていては沈没してしまう。という思いをもって過ごしていた80年代後半?90年代初頭、突如として現れたのがJリーグだったと記憶しています。バブルのころから社会に閉塞感を感じていただけにJリーグの出現が新鮮に脳裏に焼きついたのは私だけではないでしょう。この本はその華やかなJリーグの立ち上げの裏で行われた様々な努力やこころみが幅広く描かれています。
Jリーグについては様々なところで言及されていますが、プロ野球との単純な比較や、上っ面の人間ドラマの帰結を描いているものが多いなか、この本では非常に多面的にしかも客観的に「J」を捕らえていると感じました。
それにしても、川渕チェアマンや木之本興三氏などが、ここまできめ細かくJリーグを作り上げ、整備していったことには驚きを隠せませんでした。
これからスポーツに限らず、新しいことをはじめるときに、注意しておかなければならないこと、予想される困難など、見るべきポイントなどがきれいにまとめられていて、今度「自分が仕事場をいいものにして行こう。」「新しい何かを作り上げていこう」などと思ったときに参考になるのではないでしょうか?
興味深くはあるが物足りない分析
本書は、一読する限り、タイトルと内容がちょっとかけ離れているなと感じた。「Jリーグのマネジメント」と題するからには、Jリーグ発足後から今日までのマネジメントのありようについて検証されているのか、と思ったからである。本書は「Jリーグが成功している」という「前提」に立って、では「この成功はどこに起因しているのか」について、著者は「Jリーグを発足させるにあたって、当事者たちがいかに制度設計を巧妙に行ったか」に原因を求めている。そして、その当事者たちからヒアリング行うなどして、いかに生成されたか、を詳細にまとめている。 著者は本書の目的について「Jリーグという成功体験をナレッジ化してその後の共通認識を得」るということにあるしているが、正直言って当時の制度設計にかかわった人々がベストアンドブライテストな人々だったからだ、という程度の認識しかえられない。大いに物足りない。この後の第2第3弾の研究に期待して星3つ。
日本の文化がさらに一皮むけるために
タイミングと人がうまくマッチしたことで、今までの日本にない成功を見たJリーグ。その成功要因を、データと関係者へのインタビューでクールにまとめた一冊です。 Jリーグの分析もさることながら、ロス五輪前後から一気に広がり、ISLの破綻などにつながるスポーツ・バブルにも大きく紙数を割いており、プロ野球騒動に揺れた日本のこれからのスポーツ・ビジネスを追う上で、大変参考になる論文だと思います。 面白いのが、広瀬氏はJリーグが企画された当時、電通のスポーツ・ビジネス・プロデューサーとしてW杯やトヨタカップ等のサッカーに大きく関わっていたにもかかわらず、Jリーグのプロデュースは博報堂が担当することになり、開幕を客席で忸怩たる思いのもとに見つめたそうです。 「百年構想」の名の通り、目前の利益拡大だけを追い求めるだけではなく、世界の中での日本の位置をどう考えていくのか、スポーツ以外の分野においても重要となるコンセプトが示されています。
スポーツビジネスにかかわるすべての人のための本
Jリーグの成功の軌跡を当事者のインタビューにより拾い上げ、 著者独自の鋭い分析を加えている。憶測や伝聞ではなく、本物の 資料や当事者のコメントをベースに構成している。 冷静に事実をまとめるという抑制がきいているが、それでもJリーグ 立ち上げにかかわった人たちの熱さや情熱は十分に伝わってくる。 今後の日本のスポーツの発展のためのヒントが詰まった スポーツビジネスにかかわっている人、 これからかかわる人、必読の書です。
東洋経済新報社
アルビレックス新潟の奇跡―白鳥スタジアムに舞う (Big comic books) スポーツ経済効果で元気になった街と国 (講談社プラスアルファ新書) スポーツ・マネジメント入門 Jリーグの挑戦とNFLの軌跡―スポーツ文化の創造とブランド・マネジメント サッカーがやってきた―ザスパ草津という実験 (生活人新書)
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