ライシャワー博士による円仁の中国アドヴェンチャー
天台の高僧である円仁は、838年の最後の遣唐使節に参加し、唐代末期の中国において9年間に亘って教学の研究に勤しみます。大陸での歳月は旅また旅の連続であり、各地における物情騒然たる状況や中央政府による仏教弾圧という厳しい試練の中、彼はさまざまな人と出会い、教えを求め、そして思想を熟成させていきます。 円仁自身によるこの旅の記録が「入唐求法巡礼行記」であり、本書はこれを下敷きとしてライシャワー博士が中国における円仁の冒険を一般向きに分かりやすく語り、円仁の中国行の意義と成果を解説するものです。 本書には、唐朝廷における熾烈な権力闘争や地方における政情不安、あるいは僧侶・官吏・庶民の風俗・習慣など、唐代末期の世相が鮮やかに描かれています。また、当時の中国における朝鮮人コミュニティーの実態や、我が国遣唐使節団の構成や出発までの各種手続・儀式など、歴史ファンの目から見て興味をそそられる記述がちりばめられています。 それにしても、米人でありながらあの「入唐求法巡礼行記」を原文で読みこなし、こんな素晴しい歴史ドキュメンタリーに仕立て上げるとは、ライシャワー博士の学識の深さには驚きを覚えます。 また、本書の翻訳は現代天台学の泰斗によるものであり、たいへん読みやすく、かつ正確なものとなっていることを特に申し添えたいと思います。
講談社
入唐求法巡礼行記 (1) (東洋文庫 (157)) 円仁慈覚大師の足跡を訪ねて 今よみがえる唐代中国の旅 最後の遣唐使 (講談社学術文庫) 入唐求法巡礼行記 (2) (東洋文庫 (442)) 遣唐使 (岩波新書)
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